透析シャント手術について
蓮田一心会病院 透析シャントセンター長
副院長 正田浩之
【シャントとは】
- シャントとは、静脈を動脈に縫い合わせてつなぐことにより、動脈血を直接静脈に流すことをいいます。
- 腎機能の低下により体に老廃物が蓄積されるようになり、それらを取り除くために透析が必要となります。十分な透析を行うためには少なくとも1分間に約150 ~ 200mlの血液を循環させなければなりません。しかし本来ある静脈には、透析を行えるだけの十分な血液流量がありません。
- シャントを作ることによって、静脈に十分な血液が流れ、その静脈に穿刺して血液透析が行えるようになります。
【手術内容について】
- 自己血管内シャント
基本的には利き手の反対側の親指の根元の付近に局所麻酔下で約2-3cm切開し、橈骨動脈という動脈と、橈側皮静脈という静脈を縫い合わせます。手術時間は約1.5時間位です。 - 人工血管内シャント
もしも自己血管が細くて十分なシャントができなさそうであれば人工血管を使ってシャントを造設します。この場合は腋のところに麻酔をします。術後数時間は手術した側の腕が動かしずらくなるので、お帰りの際は三角巾を使用します。手術時間は約2時間位です。- いずれも基本的に日帰り手術となります。(入院対応も可能です)
その他に、シャントではありませんが、上腕動脈を皮膚直下に持ち上げて直接穿刺して透析ができるようにする、上腕動脈表在化という手術があります。
- いずれも基本的に日帰り手術となります。(入院対応も可能です)
- 上腕動脈表在化
心機能が悪い場合にシャントを造設すると、心負荷がふえて心機能がさらに悪化することが考えられる場合に行います。手術時間は約2時間位です。
【手術の合併症について】
- 局所の腫れ・痛み
→お帰りの際に炎症止めの内服薬をお渡しします※人工血管使用で時に局所の腫脹がしばらく続く場合があります
- 感染(手術創が赤くはれたり発熱したりする)
→予防的に抗生剤を内服していただきます※状況によっては局所処置や再手術を要する場合もあります(まれ)
- 出血
→通常はガーゼが赤くなる程度で、今まで輸血を要したことはありません※特に他疾患にて抗血小板剤を内服されているような場合、手術後にジワジワと創部から出血してくることが起こり得ます。ご心配な場合はすぐに当院までご連絡下さい。
- 早期のシャント閉塞
→カテーテル治療を行って再開通させられる場合もありますが、再手術となることもあります。
- スティール現象
- シャント肢静脈高血圧症
シャント血管の中枢側に狭窄や閉塞が起こると、その部位より末梢側の圧が高くなって、腕が腫れたりむくんだりします
→カテーテル治療で改善する場合が多いです - 麻酔剤などの薬剤アレルギー
→事前に病歴を確認し万全を期します※通常、生命にかかわるほどの重大な合併症が起きることはまずありませんが、何かしらの合併症が発生した場合は、適切に処置させていただきます。
【代替療法】
シャント手術の代わりとなる方法には、透析用カテーテルの長期留置用のものを、首の内頸静脈か足の付け根の大腿静脈に留置する方法があります。(ふつう3か月~1年くらい使用可能)